アート

【レポート】『堂島リバービエンナーレ2019』展に行ってきました

堂島リバーフォーラムで2019年8月18日まで開催されていました、
堂島ビエンナーレ2019展に行ってきました!

会期の終了間際に駆け込んだため終了後の記事公開となってしまいましたが、
備忘録もかねて、来られなかった方に雰囲気をお伝えできればと思います。

 

会場内写真撮影OKだったので、写真を撮ってきました。

展示されていた作品の紹介、会場の様子、感想などお伝えします。

 

展覧会主旨

 

堂島リバービエンナーレは、今回で5回目の開催です。
堂島リバービエンナーレは、2008年より2年に1度大阪の堂島で開かれている現代美術の展覧会です。(※ビエンナーレとはイタリア語で2年に1度の意味です)

アーティスティック・ディレクターは飯田高誉氏(スクールデレック芸術社会学研究所 所長/国際美術評論家連盟会員)で、

今回の展覧会はジャン=リュック・ゴダールの映画作品『イメージの本』をインスピレーションにしています。

ゴダールは、「私たちに未来を語るのはアーカイブである」と語ります。

 

本展では、20世紀の記憶のアーカイブをテーマとした作品により、「飼い馴らされて」いないアートとは何なのかを問い掛けていきます。

また、理性的な記憶に止まらない身体的記憶を呼び起こすことによって、「文明」と「野蛮」を対峙させることを表明していくことが、この展覧会のコンセプトです。

 

出品作家

 

フィオナ・タン 『 人々の声 東京』

 

・ジャン=リュック・ゴダール(1930~)

・ゲルハルト・リヒター(ドイツ、アーティスト:1932〜)

・トーマス・ルフ(ドイツ、アーティスト:1958〜)

・フィオナ・タン(オランダ、アーティスト:1966〜)

・ダレン・アーモンド(イギリス、アーティスト:1971〜)

・佐藤允(日本、アーティスト:1986〜)

・空音央(日本/米国、映像作家:1991〜)/・アルバート・トーレン(米国、映像作家: 1992〜)のユニット

 

作品紹介

【注】作品紹介における感想は、いち個人のものと捉えてご覧いただければ幸いです。

作品の難解な所は、会場配布リーフレットの解説文を参照しながら振り返っていきたいと思います。

 

☆ジャン=リュック・ゴダール(1930~)

フランス/スイスの映画作家。

半世紀を超えるキャリアで長短合わせて100本以上の映画/ヴィデオ作品を世に出してきました。

 

映像作品「イメージの本」

会場風景 ジャン=リュック・ゴダール 『イメージの本』

本展に出品されている最新作『イメージの本』は、主として既存の映画作品からの引用のコラージュで成り立っています。

「私たちに未来を語るのはアーカイブである」と語るゴダールが、過去の「絵画」「映画」「文章」「音楽」をコラージュし、暴力、戦争、不和に満ちた世界への怒り、そして世界が向かおうとする未来を表現。ゴダール自身がナレーターを務め、全5章で構成されます。

 

私には残念ながら一度では理解できない映画作品でした。

引用されるイメージは刺激的で楽しいのですが、断片に気を取られて全体がつかめませんでした。

また、引用元の前知識も作品理解には必要だったと思います。

次回見る時のために映画の内容を短くまとめます。※会場配布された堀潤之氏による解説文を参考にさせていただきました。

 

「プロローグ」

「手」の映像の連鎖によって「手で考える」こと、すなわち映画における「編集」の重要性を強調する。 ※ゴダールはかつて、映画作りに際しては目が使えないこと以上に手が使えないことの方が困ると語ったことがある。

 

「1. リメイク」

映画の歴史が広義のリメイクの連鎖で成り立っており、現実世界の悲劇もまた映画のリメイクの様相を呈していることを示す。

 

「2. サン・ペテルスブルグの夜話」
ここでは戦争を代表例とする人類の災厄全般が取り上げられる。

 

「3 線路の間の花々は旅の迷い風に揺れて」
列車のもつ運動感と致死性が絶妙なバランスを保っている。

 

「4 法の精神」
法の支配と侵犯のモチーフが全体を貫いている。
しかし、本セクションでとりわけ力点がおかれているのは、新たに「法」が成立する契機であるように思われる。

 

「5 中央地帯」幸福なアラビア

ゴダールによれば、本セクションの主題は「男と女の間の愛」であるという。「幸福なアラビア」のセクションは、従来のゴダール作品であまり目にすることのなかった中近東の映画をふんだんに引用しながら、アラビアをめぐる観念連合をひたすら穏やかに連ねていく。

 

「エピローグ」
11枚におよぶ引用作品のリストを主とするクレジットが展開し、無数の引用映像がこの映画の「キャスト」であることが示されている。「たとえ何も私たちの望んだとおりにならなかったとしても、私たちの希望は何一つ変わることがないだろう」

 

☆トーマス・ルフ(1958~)

1958年ドイツ生まれ、デュッセルドルフ在住。

「写真」というメディアの可能性を探求し続けている作家。

 

写真作品 「ニュースペーパー・フォト」1981~1991

「ニュース・ペーパー・フォト」シリーズは、新聞や雑誌の切り抜きなどを作家が10年間かけて収集し、その中から400点ほどを選んで構成したものです。

今回の展覧会では、さらにその中から25点が選ばれて展示されました。

文章を補完する意味を持っていた写真が、目的や文脈から切り離されるとその意味が抽象化し、新しい意味をおびてきます。

ただ、アーカイブとして見るには本展の展示数は少し数が足りなかったように思いました。実際には400点あるシリーズですので、全てを見ればまた作品の印象が変わると思います。

 

☆空音央(1991~)/☆アルバート・トーレン(1992~) のユニット

☆空音央

ニューヨーク在住のクリエーター。
映像や音楽作品によって民俗や歴史的記憶を浮かび上がらせる現代感覚をもつ。

☆アルバート・トーレン
ニューヨーク在住の映像作家。

それぞれソロ活動も行っている二人が、「Zakkubalan」というユニットを結成することによって映像作品を発表している。

 

映像作品 「不条理鏡」24分26秒

 

過去の映像(広告、プロパガンダ、産業推進を目的とした映像)をコラージュした映像作品で、荒唐無稽なエピソードが次々と進んでいきます。

例えば・・・

・ハトがボタンを押すと大爆発し、人々がシェルターに逃げ込む
・手でピストルを撃つフリで、死んでしまい葬儀をする
・キッチンの扉を開けると、大勢の人に笑顔で手拍子をされる
・ケーキの火を消したら煙が竜巻になる

 

初めから終わりまで、こんな調子で物語が進んでゆきます。

都会と田舎、未開の地、砂漠、鉄、自動化、煙の公害などの都市問題が、映像のピタゴラスイッチのように軽いテイストで次々に連鎖して浮かび上がります。
産業推進の暴力性が滑稽に描かれた、アイロニカルな作品でした。

 

写真作品「メガロポリス」空音央

モノクロの切り抜きのビルや建物がコラージュされ一体となり、一つの建築物のようです。

また増殖する生命体のようにも見えてくる気がしました。

作者の空音央は、ニューヨークで生まれ、色々な都市を行き来してきました。

そして世界中で「中央権力による暴力的な全世界都市の統一化」を感じたそうです。

その暴力的な構造で動く世界に対して、「様々な都市で見た風景を集めて一つの大都市にする」というコンセプトでこの作品をつくっているそうです。

 

☆佐藤充(1986~)

 

絵画作品「クロース・トゥー・ユー」

透明な板に描かれた目の作品を通して、部屋の中の絵画やドローイングを「覗き見る」ようなインスタレーションとなっています。

身体を描いた作品が多く、作者の感覚をリアルに、グロテスクに追体験するような展示でした。

 

☆ダレン・アーモンド(1971~)

イギリス、ウィガン生まれ。
写真や映像、絵画など多様な表現様式によって自然現象や歴史的記憶を刻印していくことを作品化している。

 

映像作品「オシフィエンチム(アウシュビッツ) 1997年 3月」 6分30秒

2画面に、それぞれロンドンの刑務所のバス停と、アウシュビッツのバス停が映し出されています。

2つのバス停はよく似ており、隣の画面に映し出されていることで、なんとなく続いているようにも思えてきます。

作家は、ロンドンの北に位置する刑務所に監禁されている友人を定期的に訪ねていました。

その刑務所の外のバス停でバスを待っている時に、「アウシュビッツのバス停に繋がっているのではないか」という不思議な感覚にみまわれたことが、作品作りのきっかけとなりました。

 

「ヴッパータール空中鉄道」

作家がアウシュビッツに赴く途中で乗車したモノレール(ヴッパータール空中鉄道)から撮影した映像です。これを編集により天地逆転し、さらにスローモーションにして逆回転映像としました。

モノレールを天地逆転すれば、普通の列車と錯覚しそうになります。
ふとした気づきを形にすることで、新しい意味を改めて見つめ直そうとしているようでした。

☆フィオナ・タン(1966~)

インドネシア、スマトラ島生まれ、アムステルダム在住の作家。
中国人の父とオーストラリア人の母の間に生まれ、オーストラリアで育つ。
1997年、世界中に離散した自身のの家系を追うドキュメンタリー・フィルムで注目される。古い記録フィルムの断片や文章などを作品の中に織り混ぜた作風で知られる。

 

映像作品 「影の王国」50分

「世界がひとつのアーカイヴなら、私はどのイメージを選ぶだろう?」

という作家の問いから始まるように、イメージをめぐるさまざまな問いの答えを探すために、世界各地のさまざまな人々を訪ねたドキュメンタリー作品です。

ブダペストのコレクターや、アーキビスト、美術家のアルフレッド・ジャーなどを訪ね、「イメージとは何か」という問いに様々な角度から向き合っていきます。

 

写真作品「人々の声 東京」

この写真作品は、東京の一般の人が撮ったごく個人的な写真305枚によって構成されたものです。

何だかなつかしい写真ばかりです。

これらの写真を集める際、作者はあえて写真の持ち主に会わずにアシスタントを通しました。

個人的な背景情報を徹底して切り離すことで、写真は匿名性を持ち、世界というアーカイブから選ばれたこの時代・この地域の類型が浮き上がってきます。

 

☆ゲルハルト・リヒター(1932~)

ドイツを代表する画家。

 

写真作品「アトラス体系1:2」

※この作品は撮った写真が多いので別の記事にまとめました↓(クリックで記事へ)

【作品紹介】ゲルハルト・リヒター『アトラス体系 1:2』

 

この「アトラス体系1:2」シリーズは、全809枚という著しい数の写真や新聞の切り抜き、スケッチから構成されています。

作家が1962年以降、50年以上にわたり収集したものです。

これらは単なる個人的な記録、集めた資料というだけでなく、一人の優れた芸術家の人生や作品の変遷、時代背景などを重層的に含む独立した作品であると言えます。

混沌として複雑で、関係性を切断するこの膨大な作品群から、我々はどんな意味を見いだすでしょうか、あるいは見いだすことはできないのかもしれません。

 

ガラスの立体作品 「エイト・グラス・パネル」

 

感想

テーマがしっかりした、少数精鋭の現代美術展でした。

出品作家は8名ですが、アーカイブがテーマのため作品量は多く内容は充実していました。

印象に残ったのはやはり会場の半分程を占めて展示されるゲルハルト・リヒターの「アトラス」、809枚の写真作品は壮観でした。

作品それぞれに解説の紙が置いてあり、足りない理解を補ってくれる親切な展示でもありました。

全てを理解できたとは言えませんが、刺激を受けたので行って良かったです。

アーカイブから新しい意味を見いだせるのかどうか、自然と考えさせられた展覧会でした。

混雑状況・所要時間

 

・混雑状況

写真や絵画などの展示作品は、混雑なくゆっくり見ることができました。

会期終了間近のためか、映像作品は一時満席状態になっていました。

 

・所要時間

4時間~5時間
※当日の再入場が可能だったため、途中外で休憩してもまた戻って鑑賞することができ、良かったです。
※映像だけで3時間くらいかかりました。

 

展覧会情報

 

展覧会名

堂島リバービエンナーレ2019
シネマの芸術学 -東方に導かれて- ジャン・リュック=ゴダール『イメージの本』に誘われて

開催期間 2019年7月27日[土]~8月18日[日]

休館日 無し

開催時間 11:00-18:00(入館は閉館30分前まで)

入場料 一般1000円/高校・大学生700円/小・中学生 500円

※未就学児無料
※障がい者手帳をお持ちの方、付き添いの方は半額となります。受付にてご提示ください。

 

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参考文献・参考資料

堂島リバービエンナーレ2019 会場配布リーフレット  文=掘潤之(ジャン=リュック・ゴダールの解説)、高橋洋介(佐藤充、トーマス・ルフ、フィオナ・タン、ゲルハルト・リヒターの解説)、飯田高誉(ダレン・アーモンド、空音央の解説)