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《エドワード・ホッパー 『海辺の部屋』 カンヴァス、油彩 74.3×101.6cm 1951年アメリカ、エール大学アートギャラリー》
誰もいない部屋に差し込む光。
窓の外には、すぐそばに海が広がっています。
まばゆい光を追いかけていると、奥の部屋に視線は誘われます。
誰も座っていないソファ、静かに佇む家具。
「誰もいない」ことが、際立って意識させられます。
作者のエドワードホッパーは、画業全体を通してよく見ると少しずつある変化をとげました。
・無駄な方法を省く
・本質的でないディテールを捨て去る
・コンポジションの簡潔さを強調する
・何もない空間を増やす
など、いかに本質のみに焦点をあてるかを意識し続けたようです。
これらが結実した作品が、この『海辺の部屋』です。
ホッパーの描く室内から人がいなくなるほどに、孤独感や見捨てられた思いが深まっていき、それらが果ては危機感を帯びて充満していくようです。
1930年代に起こった世界的な不況と経済危機は、アメリカ近代生活の危機でもありました。
参考文献 : ヴィーラントシュミート(2009)『エドワード・ホッパー アメリカの肖像』(岩波アート・ライブラリー)光山靖子訳,岩波書店