大阪の国立国際美術館で開催中の、
『ウィーン・モダン クリムト、シーレ 世紀末への道』展
に行ってきました。

ウィーンの芸術文化の歴史の全貌を、充実した展示作品によって見渡せる展覧会でした。
私は少し勘違いしてしまっていたのですが、本展はウィーンの総合展なのでクリムトやシーレの絵画作品は展示構成の一部分です。
油彩画が5点ずつくらい、あとはスケッチやポスターなどが展示されているようなイメージで、それだけを目当てにされていると少々物足りなく感じることがあるかも。(こんな感じです↓)

ですが絵画・建築・家具・食器・ドレス・都市計画など、とにかく他の展示も充実していて見ごたえは充分です。
展示内容や会場の様子などご紹介しますので、気になる方はぜひ。
コレクション展『ジャコメッティと II』も合わせて開催中です。
本展のチケットでこちらもご覧になれます。
目次
展覧会主旨
ウィーン・ミュージアムの至宝、約300点が来日して本展が実現しました。
絵画、建築、応用芸術、音楽などウィーン芸術文化の全容を、美術作品を通して捉えることができる展覧会です。
本展では、「世紀末芸術がウィーン近代化への過程である」という視点からひもとき、18世紀の啓蒙思想が発展し、ウィーンのモダニズム文化がめばえ、19世紀末の豪華絢爛な芸術運動へとつながっていった軌跡をたどってゆきます。
クリムト、シーレ、ココシュカなど、ウィーン世紀末の巨匠の油彩画、素描、ポスターなどが集結し、モダニズムの黄金時代を築いた作家たちの作品世界に迫ります。
展示構成

第1章 啓蒙主義時代のウィーン ー 近代社会への序章
1-2.フリーメイソンの影響
1-3.皇帝ヨーゼフ2世の改革
第2章 ビーダーマイアー時代のウィーン ー ウィーン世紀末芸術のモデル
2-2.シューベルトの時代の都市改革
2-3. ビーダーマイアー時代の絵画
2-4. フェルディナント・ゲオルク・ヴァルトミュラー ー 自然を描く
2-5. ルドルフ・フォン・アルト ー ウィーンの都市景観画家
第3章 リンク通りとウィーン ー 新たな芸術パトロンの登場
3-2. 「画家のプリンス」 ハンス・マカルト
3-3. ウィーン万国博覧会(1873年)
3-4. 「ワルツの大王」 ヨハン・シュトラウス
第4章 1900年世紀末のウィーン ー 近代都市ウィーンの誕生
4-2. オットー・ヴァーグナー
4-3-1. グスタフ・クリムトの初期作品 ー 寓意画
4-3-2. ウィーン分離派の創設
4-3-3. 素描家グスタフ・クリムト
4-3-4. ウィーン分離派の画家たち
4-3-5. ウィーン分離派のグラフィック
4-4. エミーリエ・フレーゲとグスタフ・クリムト
4-5-1. ウィーン工房の応用美術
4-5-2. ウィーン工房のグラフィック
4-6-1. エゴン・シーレ ー ユーゲントシュティールの先へ
4-6-2. 表現主義 ー 新時代のスタイル
4-6-3. 美術批評と革新
印象に残った作品
印象的だった作品をピックアップしてご紹介します。※展示順ではなくカテゴリごとに分類しました
絵画作品
☆カール・モル 『書斎の机に向かう画家の妻アンナ・モル』

☆グスタフ・クリムト 『エミーリエ・フレーゲ』

※こちらのみ、会場内で写真撮影が可能です。
☆オスカー・ココシュカ
「クンストシャウ、サマーシアター」の演目、「殺人者、女たちの希望」のポスター

「殺人者、女たちの希望」のポスター:
1909年・カラーリトグラフ・122×79.5cm
新時代の表現主義のスタイルは、フロイトの夢判断やX線の発見などに刺激され、内なるビジョンをどう外に出すかを追求しました。
オスカー・ココシュカは装飾趣味の夢にまどろむ世紀末ウィーンでいち早く目を覚まし、自我のアイデンティティを求めていきます。
音楽
☆ヨーゼフ・シャファー『魔笛』


ウィーンは、音楽の都として有名です。
この絵には古典派の巨匠、モーツァルトのオペラ『魔笛』の場面が描かれています。
☆シューベルトの夜会の様子


ロマン派シューベルトと仲間たちとの夜会や、ジェスチャーゲームに興じる様子が描かれています。
このような集まりは、作曲家が自身の作品を披露する重要な場でもありました。
☆ウィルヘルム・カウゼ『宮廷舞踏会』

ヨハン・シュトラウスは1867年にワルツ『美しき青きドナウ』を作曲したことで現在でも有名です。
ウィーン会議以降の社会不安から逃げるためにワルツは一役買い、浸透していったと言われます。
ウィーンにとってワルツは切り離せない存在となりました。
歴史
☆ジャン・ゴドフロワ
『ウィーン会議での各国代表たち』

「会議は踊る、されど進まず」で有名なウィーン会議の様子です。この絵は画家の想像で描かれているためか、そのイメージに反してリラックスした雰囲気です。
☆フリードリヒ・フォン・アメリング
『3つの最も嬉しいもの』

この絵画のタイトルは『3つの最も嬉しいもの』、つまりお酒と女性と音楽が描かれています。
ビーダーマイヤー時代のウィーン市民たちの閉塞的な社会において、「酒、女性、音楽を愛さないものは、残りの人生を愚かにすごす」とまで言われていました。
☆フランツ・ルス(父)
「フランツ・ヨーゼフ一世とその妻エリーザベトの肖像画」

エリーザベトは悲劇的な死を遂げました。ハプスブルク帝国の終末期です。
☆検閲前後のクリムトのポスター


検閲前と検閲後のポスターです。どこが違うかわかるでしょうか?ヒントは手前の木です。
市民の革命や反乱を恐れ、全ての著作物が厳しく検閲されました。当時の抑圧された環境がわかります。
建築
☆リンク通り(模型)の映像

リンク通りとは、かつて軍事要塞だったウィーンの市壁を取り壊した跡につくられた、環状道路と豪華な建築物群のことです。
模型を使って再現されたリンク通りを、最新技術で撮影した映像が展示されていました。
☆シュタインホーフ教会の模型

この教会は、建築家オットー・ヴァーグナーの代表作です。
応用芸術(家具・食器など)
☆ビーダーマイアー様式の椅子

19世紀前半、政治的抑圧の中で家庭でのくつろぎを求めたブルジョワたちは、素材を重視した簡素な家具や、使いやすさを重視した調度品に喜びを見出します。ビーダーマイアー様式とよばれる、シンプルで優れたデザインがうまれました。
☆1900年、世紀末の応用芸術

ウィーン市長の60歳記念に、オットー・ヴァーグナーがデザインした椅子です。直線的で洗練された、モダンなデザインです。

1903年に設立されたウィーン工房の、華やかで個性的なティーセットです。
混雑状況、所要時間
<混雑状況> ※平日14時頃
☆☆☆★★(5段階中3・5)
平日でも結構混雑していました。
特に目玉作品『エミーリエ・フレーゲ』の前は、撮影可ということもあり人だかりです。
入場待ち、チケット購入列は特にありませんでした。
1作品の前に平均3人
<所要時間>
1時間半〜2時間ほど。
感想
ウィーンが音楽や美術で発展していった時代背景が明確になり、なるほどと思う展示でした。
市壁を取り払い、自由な雰囲気になったウィーンに知識人たちが集まり、芸術が盛んになったこと。
ウィーン会議後は厳しい検閲などで政治的抑圧は高まりますが、 ウィーンの閉塞的な空気から享楽を求めて音楽が盛んになったことなど。
ウィーンの近代化の時代の市民生活、文化の歴史をひとつひとつ納得しながら鑑賞しました。
またウィーンの建築物は模型や映像でも美しく圧倒され、ウィーンに行って実物を見てみたいなと思いました。
展覧会情報

日本・オーストリア外交樹立150周年記念
「ウィーン・モダン クリムト、シーレ 世紀末への道」
・会期 2019年8月27日~12月8日
・会場 国立国際美術館
・住所 大阪府大阪市北区中之島4-2-55
・電話 06-6447-4680
・開館時間 10:00~17:00(8月27日〜9月30日までの金土〜21:00、10月1日〜12月8日までの金土
〜20:00) ※入場は閉館の30分前まで
・休館日 月(9月16日、23日、10月14日、11月4日は開館)、9月17日、24日、10月15日、11月 5日
・観覧料 一般 1600円 / 大学生 1200円 / 高校生 800円 / 中学生以下無料(要証明)
・音声ガイドあり 550円 ※ご案内…城田優(俳優) 、ナレーション…玉川砂記子(ナレーター)
・アクセス
京阪中之島線「渡辺橋駅」2出口から徒歩約5分
Osaka Metro 四つ橋線「肥後橋駅」3出口から徒歩約10分 JR「大阪駅」、阪急電車「梅田駅」から徒歩約20分 JR大阪環状線「福島駅」、東西線「新福島駅」2出口から徒歩約10分 阪神電車「福島駅」3出口から徒歩約10分
Osaka Metro 御堂筋線「淀屋橋駅」、京阪電車「淀屋橋駅」7出口から徒歩約15分 大阪シティバス「大阪駅前」から、53号・75号系統で「田蓑橋」下車徒歩約3分
※専用駐車場はありません。ご来館は電車・バス等をご利用ください。 ※心身に障がいのある方で、車で来館される場合は、当館近隣の有料駐車場をご利用くださいますようお願いします。
・展覧会公式ページ
https://artexhibition.jp/wienmodern2019/